4-4 分子集団研究系
国内評価委員会開催日:平成14年12月17日 委 員 石黒 武彦 (京大理,名誉教授)
小島 憲道 (東大院総合文化,教授) 小林 速男 (分子研,教授)
藥師 久彌 (分子研,教授) オブザ−バ 中村 敏和 (分子研,助教授)
米満 賢治 (分子研,助教授) 井上 克也 (分子研,助教授) 鈴木 敏泰 (分子研,助教授) 国外評価委員面接日:平成15年1月15日∼16日
委 員 Professor Peter D ay (T he R oyal Instituion of Great B ritain)
4-4-1 点検評価国内委員会の報告
前回の例に従い今回の点検評価においても分子集団研究系および分子物性関連分野の研究グループの点検評価を茅 所長の出席の下,上記のように合同で行った。委員会開催以前に,上記の6名の分子研メンバーに加え当日海外出張 で欠席した夛田博一助教授(分子スケールナノサイエンスセンター)の7名に関する過去3年余(1999年以降)の業 績リストと主要論文およびその研究内容についての適当な解説記事等の資料を点検評価委員に送付し,査読して戴い ていたので,当日はこれを踏まえて分子集団および関連分野の活動状況について,評価,議論をしていただいた。 (1)分子物性関連研究グループの評価の概略およびグループ間の協力について
分子研における分子集団および関連分野のグループの研究活動は国際的にも高い評価を受けており,審査対象となっ た7名のメンバーは一人一人独自の興味深い基礎研究を展開している。また,応用的な観点からも注目される研究も 展開されている。この様な概評がなされた後,当日の議論は主に分子物性系の研究グループは将来どの様に研究分野 をリードして行くべきかという観点に集中して展開された。一方,分子研における分子物性関連グループの実績と将 来への可能性に対する期待を反映しているものと思われるが,分子研の分子物性関連分野に関わる最近の変化は際だっ て大きく,前々回の点検評価が行われた1996年の時点では発足していなかった分子物質開発研究センターが1997年に 発足し,今回の点検評価が実施された2002年には発足後5年を経て分子物質開発研究センターは分子スケールナノサ イエンスセンターへと改組発展している状況である。また分子物性関連研究グループのメンバーに関しても,分子物 質開発研究センター・パイ電子開発研究部門の山下敬郎助教授は2000年に東工大教授(大学院総合理工学研究科物質 電子化学専攻)に転出し,同じ2000年に分子集団研究系分子集団動力学部門に着任した夛田博一助教授は分子スケー ルナノサイエンスセンターの発足に伴い,同センター所属となった。この様な分子物性研究系を取り巻く激しい変化 の流れにも関わらず,分子集団研究系および分子物性関連分野の研究グループはこれまで研究会活動などを通して研 究系の枠を越えて緊密に協力してきた。これが今回の点検評価をこれまで同様,分子集団研究系の枠を越えて行って いる理由でもあるが,今後はより活発に具体的な研究を通してグループ間で緊密な協力研究が更に進展することによっ て単一グループでは不可能な研究を遂行する事が望まれている。このためには,将来,分子集団関連グループの行っ ている共同的な研究活動を更に一層押し進め,現在の研究組織の枠を越えて有機的に協力出来る何らかの体制を実現 する事が望まれる。
(2)分子研に於ける分子物性関係の設備と研究グループのサイズについて
現在,分子スケールナノサイエンスセンターをも含めると非常に多くの分子研のメンバーが分子物質関連分野に関 わるようになっているが,分子研の分子物質研究としてはより基礎的な研究を志向すべきであろう。また,かっての 分子研の機器センターの所有していた物性機器は共同利用機関の物性評価機器としての役割を十分果たしていたので あるが,現在は高性能の物性評価機器が無くなり,殆どの機器が共同利用機関の機器としての役割を果たせていない。 ナノ関連機器として大型の機器の導入の計画が進行中であるが,物理系の共同利用機関とは異なる,分子研としての 求心力のある物性測定機器が何であるかを考え,その導入を図るべきである。
研究グループの規模に関しては,テーマを一つに絞れば,現在のサイズで十分効率よく研究を実施出来る場合もあ り,また,教授のグループと比較的短期間に転出する可能性の高い助教授のグループの間,あるいは理論と実験など の間でも適正規模は自ずから異なるものと思われ一概には言えない。しかし,グループ内の研究者の流動性が大きい 分子研では,少人数で複数の研究課題を実施せざるを得ない事が多いため,研究者の流動によって積み上げた研究課 題を継続できないで中断せざるを得ないと言う深刻な状況も起こりつつある。流動性を保ちつつ研究の継続性を確保 できる事が必要であろう。
(3)研究分野の今後の発展の方向について
分子科学はおしなべて成熟期に入っているように思われ,新たな方向を目指すべきである。研究は成熟期を経由し て初めて次の展開が明らかになると言う側面が強いので,成熟期に入ったと言われ始めた現時点で,今後の展開につ いて直ぐ適切な見通しを得ることは容易ではないと思われるが,ともあれ分子研の様な処で,大きな装置を持って,少 しだけ先を行く仕事を志向すると言うことは望ましいことではない。共同利用機関としての重要な役割として,将来 分子科学がどのような方向に進もうとしているのかを明瞭に提示することが必要である。例えば,分子研の分子スケー ルナノサイエンスセンターの特色として,「分子スケールナノサイエンスセンターでは物質科学に即した研究を行う」 とは言っても,具体的に何をしたいのかが客観的には見えてきていないように思われる。以前,バイオ素子関連のプ ロジェクトが推進された時代があったが,結局はその研究は集積せず,これまでのバイオ素子のプロジェクトは幻想 に終わっている様に思われる。現在のナノテクノロジーにも同様な可能性(危険性)が大きいものと多くの人が感じ ている。この様な状況で,研究分野の新たな方向性を出す事こそ共同利用機関が担うべき事である。そのためには実 績のある研究者が集まっている分子研のような処で研究グループ間で横断的に協力し,研究を推進する事が必要であ ろう。一方,研究の模索期には個人の研究の進展が重要であり,グループが集まったからと言って研究が進むもので はないと言う側面もある。芽が出たところを大きくするような支援体制も同時に必要であろう。研究発表については 個々のグループが沢山の論文を出すことは重要ではない。流行を追うことではなく,大学では出来ないような先端的 な研究をやるべきである。話題になっている分子素子については壁をつき抜けるような仕事をして欲しいが,今後一 山も二山も越えねばならないと思われる状況であり,分子素子に捕らわれる必要はない。また,酸化物などとは異な る分子独自の高次機能が内在されたような分子物質の開発が望まれる。必ずしも結晶の周期構造に捕らわれることな く,生体系から教わることもあるのではないかと思われるし,一方,生体分子機能の研究の立場からは物性科学的な 観点の導入が必要となる課題もあるのではないかと考えられる。
今後の分子研における分子集団関連分野の研究では「分子の視点」を持って新しい分子機能の研究領域を広く開拓 することが出来る様な状況を作り出す事が強く望まれている。
4-4-2 国内委員の意見書
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(2) 分子科学研究所における研究の進め方について考えるとき,教育義務が比較的少なく設備的にはより充実したもの をもって一定の目的意識の下に研究を進める,言わば研究プロ集団として機能することが可能なところとみること ができるとともに,共同利用機関としての貢献が求められる場であること,また内部昇格を認めていない研究の場 であることに留意する必要がある。教育義務が少ないことは学生が少ない分マンパワー的には恵まれない状況にあ るということができるが,研究者自らの考えにもとづく方向に集中することが出来,独自的な研究を指向すること を可能としている。共同研究へのサービスは負担となる可能性はあるが新たな方向に研究を発展させる機会につな げる可能性をもたらすものと捉えることも可能である。こうした中で人事的にも流動性を維持するための努力が重 ねられている。これは所員に限られた期間に高い業績を上げることを迫るものであるが,それが現実のものとなっ ている実績を持っていることは高く評価される。その結果,数多くの有力な研究者を輩出することにつながってい るとともに,分子研に於ける陣容が陳腐化することなく重要な貢献をするレベルを維持することにつながっている。 今後においてもこれを維持してゆくためには研究者の交代に伴い新しくスタートした研究グループにはその研究推 進に必要な設備投資が傾斜的になされ早期に立ち上げることが出来るよう十分な資金的な手当てがなされる必要が ある。(伝統的にこうした配慮はなされているようであるが。)
(3) 一方,分子科学に関する研究を進める使命を持つ研究所として眺めた場合,単なる個々の研究者の集まりといった 構成を超えたものが出されることが期待される。即ち,近接した専門領域の研究者が結集する事によって可能とな る協力相互作用に基づいて,研究面での新しい方向性とでも言うべきものを生み出すことが求められる。このため には各研究者の間の連携が推進されることが望ましい。共同利用に関する要務があることは負担増を求めることに つながるかもしれないが,個々の研究者が業績面での確かな足場を作りつつ,研究者の間で積極的な共同研究が心 がけられることが求められる。こうしたことによって個々の研究者の境界領域に新しい問題がはぐくまれる事にな るのではないか。理論研究の場合であれば分子研内で進められている研究が対象の一つとして取り上げられること
が望ましい。今後の分子科学に多大な期待が寄せられつつあるものの,あるべき展開の方向を見出すことが求めら れている状況にあると思われるからである。
(4) 例を質・量の両面においてわが国は世界のトップレベルにある有機導電体の研究に取れば,分子研のメンバーはそ の核の一つに位置している。しかし,このような有機導電体の研究はいわば成熟期にある。これは次なる方向が模 索されているときにあることを意味している。特にナノサイエンスが声高に主張され研究の大きな流れが作られよ うとしている現状において分子性導体の研究がどの方向に活路を見出すべきかという問題がある。分子研にはこう した状況の下で将来への展望を拓くことが期待されているように思う。当該分野に今後の発展はあるかと聞かれれ ば,あると答えることになるが,そのためには現在の単純な延長線を超えた新しい方向付けがなされることが肝要 なのであり,分子研こそはそうした取り組みが可能なところではないかと思われ,それがなされることへの期待が 寄せられる。強力な専門家集団を擁する分子研は新しい活路を見出す試みがなされるべき場でもある。
なお,基生研,生理研などと連携し新しい方向を作り出す試みもなされているようであるがそれがより積極的に取 り組まれ,分子科学の活躍する新しい場が創り出されることに繋げられることが望ましい。
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分子集団関連研究分野において,分子研は主として有機電荷移動錯体の超伝導など電子物性の研究および有機・無 機複合錯体の分子磁性の分野で重要な貢献を果たしてきた。このことは,当該分野の多くの論文,学会発表で共著者 として名を連ねていることからも明らかである。特に分子研で開発された有機無機複合錯体から遷移金属イオンのd電 子と導電性有機分子のπ 電子の相乗効果によって発現する磁場誘起超伝導相が発見されるなど,物性科学への貢献は 高く評価される。また,低温・高圧下ラマン散乱や固体 NMR による有機電荷移動錯体における様々な電子相の研究で は,共同研究の拠点として重要な役割を果たしている。
(2)分子集団関連研究分野での個別評価
小林速男氏は,導電性有機分子と磁性金属錯体による複合錯体から超伝導相と反強磁性相の競合や磁場誘起超伝導 相を発見するなど,d–π電子相互作用によって発現する特異な伝導物性の研究で優れた研究成果をあげている。また単 一分子の集合体による合成金属の開発など,その成果は国内外を問わず高く評価されている。
藥師久彌氏は,様々な有機導体を対象に種々の電子相をラマン分光法で解析し,電荷分離相の発現を微視的に解明 するなど,当該分野に大きな貢献を果たしている。
中村敏和氏は,固体 NMR により有機導体の様々な電子相を微視的に解明しており,当該分野において,固体 NMR による電子相の研究の重要な拠点になりつつある。
米満賢治氏は,有機導体や低次元混合原子価錯体で現れる様々な電子相の出現メカニズムを明らかにしており,理 論面から当該分野に果たしている役割は重要である。また,光誘起相転移など非平衡で現れる特異な現象の解明にも 取り組んでいる。
井上克也氏は,有機ラジカル分子を配位子にした金属錯体を対象に,様々な次元性の新規分子磁性体を開発してき たが,さらに合理的分子設計に基づいたキラル分子磁性体の開発に成功している。この系では,磁性と非線形光学の 相乗効果が期待されており,分子磁性の分野で重要な貢献を果たしている。
鈴木敏泰氏は,多数のフッ素を置換基に持つ様々なフッ素化デンドリマーやフッ素化チオフェンオリゴマーなど独
自の機能性有機分子を開発し,その有機 E L 素子への応用を積極的に進めている。物質の開発には独創性があり,高く 評価されるものである。
夛田博一氏は,シリコン基盤と末端に2重結合を持つ有機分子との共有結合を制御することにより有機単分子膜の 作製とこれを利用したナノスケールのパターニングの作製に成功しており,その独創性が高く評価される。今後の発 展が期待される。
(3)当該分野の国内,国外での研究分野としての重要度
有機電荷移動錯体を中心とする分子集団系の分野は,1979年に世界で最初の有機超伝導体(T MT S F )2PF6が発見され て以来,様々な電子相が発見されるなど大きな発展を遂げ,物性化学,物性物理学の重要な分野になっている。様々 な新物質開発と多彩な電子相の発見は化学者と物性物理学者を結びつける重要な役割を果たしてきた。
(4)今後この分野の発展はあるか,どのような方向か
有機電荷移動錯体を始めとする分子集団系は,極めて多彩な電子相を内包しており,物性研究の宝庫であることは 間違いない。しかし,有機超伝導発見から20年以上経った現在,単分子の集合体による超伝導相の開発など重要で未 開拓の課題は多くあるが,自然科学者を驚かすような大発見は少ない。言い換えれば,先が読める研究になってきて いる。また,先が読めるため,必ず成果が出るルーチン化した研究になっている傾向が否定できない。また,分子集 団系を対象としている物性化学者の研究の切り口,発想が同じベクトルを向いている現状に危惧を感じる。多彩な研 究の切り口と発想から,新しい萌芽的な研究が出て来ることが切望される。
本分野の発展には,単体や酸化物にはない分子集団系独自の特色を最大限活用することが不可欠であろう。例えば, 異種分子から構成されるヘテロ分子集合体において,それぞれの分子特有の機能性の相乗効果によりヘテロ分子集合 体でしか発揮できない高次機能性,複合物性の開拓がある。分子研で開発された有機無機複合錯体による磁場誘起超 伝導相の発現などはd–π相互作用によって初めて発現する現象であり,単一の分子集団系では現れないものである。ヘ
テロ分子集団系において,独自の機能を持つ異なる部品が集合し全体として高次機能を発現する仕組みは,階層は異 なるが生命システムの高次機能発現に通じるものがある。
(5)分子研の当該分野が今後どのように進むべきか
現在,分子研の分子集団研究系および関連分野は分子集合体の物性化学分野の重要な拠点になっており,全国的な 共同研究が積極的に行われています。しかし,構成単位の研究室の規模は小さく,大学の1研究室との差は殆どあり ません。分子研が重要な拠点になっているのは,分子集団研究系および関連分野の研究者の質の高さに負うところが 多いと思われます。
分子科学研究所における分子集団研究系に期待されることは,この分野の先導的研究の司令塔となることでしょう。 時代の先を読み萌芽的な研究にすばやく対処するため,客員部門を有効に活用し,国内外を問わず優れた若手研究者 を客員部門の研究員として待遇し,先導的研究を開花させる役割があると思われます。次に,開花した段階でプロジェ クト研究として遂行するシステムが必要でしょう。例えば,有機超伝導体研究の発展期に重要な役割を果たした電総 研基礎部門のように。また,研究対象と解析の切り口を広げることも重要と思われます。分子集団研究系の物性化学 が蓄積してきたものは,将来,生命システムを分子集団系のレベルから解明する上で重要になって来るものと思いま す。また,原子・分子を対象としている物理化学部門との横断的研究による分子集団系のフェムト秒光物性の研究な
ども今後重要な課題になると思われます。
(6)分子研の共同利用機関としての現状と将来への提言
物性科学分野での代表的な共同利用機関として,東大物性研と分子科学研究所があります。物性研の場合,超高圧 や超強磁場など特化した極端条件下での物性測定の共同利用に特色があります。分子研の場合,1980年代には高額な 汎用性の高い機器(例えば X PS など)の共同利用拠点として重要な役割を果たしてきました。しかし,政府による様々 なプロジェクト研究支援などにより多くの大学で高額機器が整うようになった現在,分子研の共同利用の役割は少な くなってきています。現在,分子研における分子集団系部門の役割は,共同利用よりむしろ共同研究の拠点として重 視されており,ここに特色をもたせるべきでしょう。そのためには,(5)で述べましたように,客員研究部門を活用した 求心力のある先導的研究の推進と開花させた研究がプロジェクト研究として推進できる体制が必要と思われます。
(7)分子研に対する建設的批判,提言
分子研の分子集団研究系および関連分野は分子集合体の物性化学分野の重要な拠点になっており,全国的な共同研 究が積極的に行われています。しかし,構成単位の研究室の規模は大学の研究室より小さい位です。
また,大学院生を集めるのに苦労されていると思います。今後の少子化時代を考えますと,この問題は簡単には解 決できない問題です。分子研が組織の上でも世界の拠点になるためには,大学院生の授業料を廃止し R A 制度による給 与の支給など世界に通用する制度,スタッフに優秀な外国人を任用するなど世界の優秀な研究者が充分に活躍しやす い制度を検討されるのも必要かと思います。
4-4-3 国外委員の評価
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1. Background
For a number of years now, the Institute for Molecular Sciences has invited a senior scientist from outside Japan to conduct appraisal of the Institute’s research programmes falling within the general field of molecular solids. As the third such reviewer, I was asked to survey activities covering the years 1999–2002. The review was carried out by examining the publications falling within this period, and by personal interviews with seven group leaders in the Departments of Molecular Assembly and Theoretical Studies, and the Molecular Scale Nano-Science Centre. The interviews took place on 15–16 January 2003, when I also had the opportunity of viewing the laboratories. I would like to take this opportunity of thanking Prof. H. Kobayashi and his colleagues for the welcome that they extended to me, and their readiness to make themselves available for interview.
2. Some Quantitative Aspects
Essential background to an evaluation of the quality and significance of the research effort in any laboratory are the data about input, in terms of the numbers of people involved, and output, as measured by the traditional method for communicating results in basic science, namely publications.
The first feature noticed by anyone who comes to IMS is the relatively small number of personnel. Of the seven groups operating
in the area of molecular solids, the largest had 12 members over the 3 year period under review (though not all present at the same time), and the smallest (in fact one of the newest) had only 3. The average size seems to be about 5–6. Apart from the group leaders themselves, other categories of personnel include Research Associates, Technical Associated, Visiting Fellows and Graduate Students (Masters and Doctoral). Numbers of the latter are limited in practise to 12 per year, though I understand that up to 18 could be accommodated if suitable candidates came forward. I return to this matter later in my report. For the moment, let it simply be noted that in the Institute as a whole there are 48 groups, so in a given year, many groups will not have the chance of welcoming a new student.
Considering further the input to the research effort, one might have expected IMS to be a substantial world focus for scientists in the molecular solids field. While it is true that widespread collaborations are in existence with outside laboratories, it is surprising that the majority of the visiting scientists originate either from Eastern Europe or Asian countries such as China and Korea. Representatives from Western Europe and the USA are few in number.
It is further of interest to examine the distribution of effort in the very wide field covered by the phrase “molecular solids.” In general, one might expect to find work covering both conductors and magnets, monolithic crystalline and thin film assemblies, synthesis and physical characterisation, and experiment and theory. In fact, taking the seven groups under consideration, that is very much what is found. Two groups focus on crystalline molecular conductors and magnets (Kobayashi, Inohe), two on physical techniques (Yakushi, Nakamura), one on theory (Yonemitsu), and two on surface and thin film phenomena such as FET’s (Suzuki, Tada). There is also very good access to structural characterisation, through XRD or microscopically by AFM.
As far as research output is concerned, the quantitative measure of publications presents a remarkably high level of productivity. The team of about 40 researchers in the 7 groups produced no fewer than 369 publications in the three year period. That represents an overall mean of around three publications per researcher each year! Of course, there are also many outside collaborators involved, and productivity is not uniform; nevertheless this constitutes a most remarkable record. Furthermore, whilst a substantial number of publications are in the proceedings of conferences, such as the biennial International Conference on Synthetic Metals (and hence not subject to such stringent refereeing as mainstream papers), most of the rest are in high level international journals, including many in journals having the highest impact factors such as Science, Nature, JACS, PRL, Angew. Chem., etc. It is notable, however, in view of this high rate of output, and in a field from which advanced applications might be expected to flow, that there is only one patent listed.
3. Quality of Work
The willingness of the IMS groups to subject themselves voluntarily to examination and evaluation by an outside observer who is himself active in the same field is itself a measure of confidence in the Institute’s scientific standing. And indeed such confidence is not misplaced. There can be no doubt at all that IMS is recognised throughout the world as one of the most highly respected centres of activity in the basic science of molecular solids. Such has been the case for many years, so the challenge faced by the Institute is to maintain (and, if possible, enhance) this high standing. In the U. K. system of research evaluation it is customary to categorise work as being “internationally leading,” “internationally competitive,” “nationally leading,” “nationally competitive,” etc. On that basis, I have no hesitation in stating my own personal opinion that all the work I had the opportunity of learning about is fully internationally competitive, and further, that numerous aspects of it are internationally leading.
The emphasis of the research programme at IMS has always been on the search for understanding of the fundamental principles
underlying the physical properties of molecular solids, especially collective electronic properties such as conductivity. A large number of different ground states are accessible to such narrow-band strongly-correlated electron systems, which are often also low- dimensional. With the passage of time, however, broad outlines of the structure-property relations in this class of materials are becoming clearer. Hence worldwide attention is turning towards a search for new physical effects, usually involving new combinations of properties not normally found together in the same lattice. Examples from the IMS work include the association of different kinds of magnetic order with superconductivity, magnetism in structurally chiral lattices and phenomena connected with charge ordering. All this work is at the leading edge on an international level.
Work on fundamental understanding of molecular solids is usually based on experiments requiring monolithic long-range-ordered single crystals, but in parallel, as such understanding improves, emphasis may start to shift towards other forms of molecular organisation such as thin films and patterned surfaces. Welcome developments of this kind are now underway at IMS, which should lead to systems tailored for specific purposes, such as gas sensing and molecular electronics.
4. Some Concluding Remarks
IMS is recognised universally as one of the world’s leading centres for the study of molecular solids. That this has remained the case for many years must be a matter for congratulation to the staff and those responsible for research policy. Nevertheless, it remains important for the future maintenance of this standing that the Institute and its sponsoring agency continue to be vigilant, both in selecting lines of investigation and in the way they are organised. One task of an external evaluator is to draw attention to issues that could impact on future performance, and so make this centre of excellence even more so. In that spirit, let me highlight a few points in the form of questions.
Research that has the greatest impact is usually that which takes knowledge into uncharted new waters, that is, where even the principles of behaviour may not be known, and where results may be quite unexpected. This kind of adventurousness is something that IMS is in a good position to foster. In creating the circumstances where originality can flourish, a steady influx of new ideas and approaches is desirable, and is most effectively accomplished by changeover of personnel. It is encouraging to see new groups and new directions of research being established, but a further critical consideration concerns the researchers on shorter term appointments. Overseas visitors on limiter-term Fellowships can bring much to a laboratory in terms of fresh perspectives, so it is disappointing not to see larger numbers of high-level staff from the world’s major laboratories taking advantage of the excellent environment that IMS provides. Similarly, despite the sever limitations placed on the Institute by the quota of graduate students that it is allowed to accept, strenuous efforts should be made to bring the opportunities provided by IMS to the attention of a wider range of potential candidates.
Finally (and at a risk of importing prejudices from another part of the world), it comes as a great surprise to learn, not just that three years output has produced only one single patent, but that the Institute has no mechanism for technology transfer, and protecting intellectual property. The field of molecular solids is one with considerable potential for applications, and the Institute needs to be attentive to any opportunities that arise.
Having said that, the name of IMS is a byword for excellence and productivity in molecular solids research. It was a pleasure for this evaluator to have the chance of seeing it at close quarters, and I wish it well for the future.
Peter Day 20 January, 2003
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 訳文 分子性固体研究活動の外部評価
1. 背景
これまで,分子性固体分野に関する研究所の研究プログラムの評価を行うために,分子研は海外から指導的科学者 を招いてきた。その3番目の評価委員として,私は,1999−2002年の業績を調査するように依頼された(訳注:評価 をまとめる時の参考にして戴くために前二回のレポートのコピーを前例としてPeter D ay先生に事前にお送りしていた ので,誤解されたものと思われるが,実際は4回目である)。点検評価はこの期間の出版物の査読および分子集団研究 系,理論研究系および分子スケールナノサイエンスセンターの7人のグループリーダーとの個人面接により行われた。
2. 研究の量的な観点から
どのような研究室においても,研究活動の質と意義に対する評価の基礎は,研究活動を行った人の数という「イン プット」と,基礎科学における発表に関する伝統的な方法,即ち発表論文によって測られた「アウトプット」である。
分子科学研究所を訪れる誰もが気づく第一の特徴は,人員が比較的少ない点である。分子性固体分野の7つのグルー プでは,この点検評価に関わる3年間において最も大きいグループで12人,最も小さいグループ(新しいグループ)で は,僅か3人である(必ずしも全ての人員が同時にいたわけではない)。平均サイズは,約5−6人のように思われる。 グループリーダー自身を除けば,他の人員は,助手,技官,客員研究員及び,大学院生である。大学院生の数は,1 学年に12人と制限されている(もし適当な候補者がいる場合には最高18人が受け入れ可能と理解したが)。この問題に ついてはまた後で述べる。まず,研究所全体として48のグループがあるということを考えると,多くのグループで新 入生を受け入れるチャンスがないということは差し当たり注目しておくべき事である。
研究活動に対する「インプット」を更に考える場合,分子科学研究所は分子性固体分野の科学者の世界的拠点であ ることが期待されているという点があるであろう。確かに,広範囲な研究協力が海外の研究室との間でなされている のは事実であるが,外国人客員研究員の大多数が,東欧あるいは中国,韓国といったアジアの諸国から来ていること は驚くべき事である。西欧及び米国の代表的研究者は少ない状態である。
「分子性固体」という言葉によって包含される非常に広い分野における研究活動の様子を調べることは非常に興味深 いことである。そこでは一般に,伝導体と磁石,単一結晶および薄膜の集合体,合成および物理的評価,実験および 理論等の仕事がなされていることが期待されている。実際,7つのグループはまさにその通りの状況にある。2つの グループは分子性結晶の伝導体および磁石(小林,井上),2つのグループは物理測定(薬師,中村),一つは理論(米 満),および2つのグループは F E T など表面や薄膜の現象(鈴木,夛田)に研究の主眼を置いている。X線回折による 構造研究や A F M による微視的な構造研究に関しては非常に良い環境が存在する。
研究の「アウトプット」に関して,発表論文の数量に関しては著しく高いレベルにある。7グループの約40人の研 究者チームは,この3年間に少なくとも369報の論文を報告した。それは,全体平均として毎年1研究者あたり約3報 の論文を出していることを示している! もちろん,外部の共同研究者のものも含んでおり,また,その生産性は均 一ではない;それでもなお,これは最も注目すべき記録である。更に,論文のうちのかなりの数は,2年毎の合成金
属国際会議のような国際会議のプロシーディングであるが(従って,主要論文誌のような厳しい審査を受けるもので はないが),大部分の残りの論文は最も高いインパクトファクターを持つScience,Nature,JACS,PRL,Angew. Chem. などを含む高いレベルの国際雑誌に報告されている。しかしながら,この高い評価の「アウトプット」と比べると,新 らたな応用が期待されるこの分野において,特許がたった1件しかないことは注目しなければならない。
3. 研究の質について
分子科学研究所が自発的に,同じ分野で活躍する外部の研究者によって評価をうけることは,それ自体が研究所の 科学的地位に対する自信の現れである。そして,実際,その自信は見当違いのものではない。分子科学研究所が,分 子性固体の基礎科学分野で最も重要な活動拠点中心の1つとして世界中で認識されることに関しては,疑いの余地が ない。この状況は長年持続されてきたが,今後この研究所が挑戦すべき事は,この高い地位を維持する(そして,可 能であれば,さらに躍進する)ことである。英国の研究評価システムにおいて質の高い研究とは,「国際的に先導的で ある」,「国際的に競争力がある」,「国内的に先導的である」,「国内的に競争力がある」等に位置づけされるのが通常 である。それに従えば,今回知る機会を得たすべての分子科学研究所の研究は,十分な国際的競争力があり,そして 多くの点において国際的に先導的でもあると,躊躇なく結論できる。
分子研の研究プログラムは,常に分子性固体の物理的性質の根底にある基本原理の理解に対する研究,とりわけ電 気伝導度といった集団的な電子の性質に重点が置かれていた。そのような狭いバンドの強相関電子系(そしてまた低 次元系でもある)においては,多数の異なる基底状態が実現している。しかしながら,時代が進み,これらの系の構 造と性質の関係の大まかなアウトラインに関しては,明らかになってきている。従って,世界的関心は,新しい物理 的効果の探索(同じ格子において通常同時には見いだせない性質の組み合わせなどを含む)に向けられている。異な る種類の磁気秩序と超伝導の共存,キラルな構造をもつ磁石,電荷秩序に関わる現象といった,分子研の研究はまさ しくその例である。これらの研究はすべて,国際的なレベルにおいて最先端に位置している。
分子性固体の基本的な理解に関する研究は,通常長距離秩序をもつ単結晶を要する実験に基づいている。しかし,単 結晶研究の理解が進むと共にそれと平行して,薄膜やパターン化された表面といった他の分子組織化へ重要性がシフ トし始めるかも知れない。この種の発展が分子研で現在進んでいることは歓迎すべきであり,この発展はガス感知や 分子エレクトロニクスのような特定の目的を目指した系をもたらすであろう。
4. 結語
分子研は,分子性固体研究の世界の主要な拠点の1つであると広く認知されている。長年にわたりこの状況を維持 していることは,スタッフおよびその研究方針の舵取りをしてきた責任者にとって喜ばしい事である。それでもなお, 研究所および財政面を支援する機関が研究の方向性や研究組織の選択に関して十分に注意し続けるということは研究 所が将来も現在の位置を維持し続けることにとって依然として重要である。外部評価委員の1つの仕事は,将来の研 究効率に影響を与え,また,この C OE(分子科学研究所)をさらにその名にふさわしくするような問題提起をするこ とである。その精神において,質問の形で2,3のポイントを強調させて頂きたい。
最も大きい影響力を持つ研究は,一般に未踏の新しい水域,つまり挙動の原理さえも知られてなく,また結果も全 く予測できないものに対して知識を提供するものである。この種の冒険を推進するのに分子研は良い立場にある。独 創性が育つ情況を作るには,新しい発想や取り組み方が絶えず流入することが望ましく,また,人員の流動性が最も 効果的である。分子研において新しいグループおよび新しい研究の方向が確立されているのは結構なことである。し
かし,短期任用の研究者については更に慎重な考慮が必要である。
限られた期間のフェローシップによる海外からの訪問者は新しい展望という観点で研究室に多くの物をもたらすこ とができる。従って,世界の主要な研究室からの高水準の研究者が分子研のもつ優れた環境を利用していない現状は 期待はずれである。同様に,受け入れ可能な大学院生に対する厳しい制限はあるものの,更に広い範囲の潜在的な候 補者を分子研に引きつけるよう精力的な努力を行うべきである。
最後に(他の国からの偏見である事を承知の上で言及するが),3年間でたった1件の特許しか出ていないというこ とよりも,研究所が技術移転や知的財産保護のためのメカニズムを持っていないということを知って大変驚いた。分 子性固体の分野は,応用の可能性をもった分野であり,研究所はそのような機会に何時も注意を傾けている必要があ る。
ともかくも,「IMS 」の名前は,分子性固体研究におけるきわめて優れた活動拠点として広く認知されている。今回 の評価で分子研を間近に見る機会を得たことは喜びであり,将来もこの状態が維持されることを希望する。
Peter Day
2003年1月20日